日記|靴のカスタムについて



そこはワークブーツが数年前に通ってきた道。

立ち読みだったのでうろ覚えなんですが。男の靴雑誌ラストissue.9に靴のカスタムのススメみたいなページがありました。
僕はそれを見て、ああとうとう紳士靴でもそれを勧め始めたかとちょっと残念に思いました。

ワークブーツですと、10年くらい前から福禄寿、ユニオンワークス、BRASSなどに代表される靴修理屋さんによるソールカスタムが盛んになりました。

それから数年、ブーツのカスタムは隆盛を極め、ソールだけに留まらず、アッパー、シャフト、いろいろ手を加えられるようになりました。
トリプルミッド、ダブルステッチ、シャフトカット。ストラップ、ジッパー増設。
染め替え。
それらのカスタムが可能になったという技術の向上には意味があります。
修理技術向上により可能になったカスタム、逆にカスタム技術向上により可能になった修理というものもあると思います。

しかし、もはや元のブーツに意味があるのかというくらいに手を加えて出来上がる「ぼくだけのせかいにひとつだけのブーツ」
「直す」、「使いやすくする」といった本来のところから、てんこ盛り全部のせ最強ブーツのような怪獣的進化の方向。

その歪さに違和感を感じたのか、修理屋さんたちも最近はやっぱり普通がいいよねという方向になっています。

そして、今さら紳士靴がその道に。
なぜワークブーツがカスタムを受け入れられた、親和性が高かったかというと、ワークブーツは買う方も作る方もある種「あまり細かいことは気にしない」という買う側の気持ちにも作りにも寛容さがあり、余地があります。

逆に、紳士靴はスタイルが決まっています。
特に高級紳士靴というジャンルは。
だから、たぶんあまり定着しないだろうなという気はしています。

今でいうカスタムって昔から技術的にはできたはずなんです。

これまでカスタムがなかったというより、できるけどやらなかったということなのではないでしょうか。

車、バイク、自転車もそうであるように、カスタム、場合によっては修理も、もともとのメーカーがこれが最良のバランスだと売っているものに手を加えるということで、バランスを崩すということになります。
修理はなるべくもとの機能、バランスを維持するという目的のもとに行われますが、カスタムはどうしてももとのバランスを崩すことになります。
以前BRASSがブログに、アッパーの割れに当て革やステッチで補強をしても、どうしてもその一部分のみが固く厚く強くなるので、他の部分に影響が出ると書いていました。
それと同様に、ソールにしても、もとのソールよりもあまりに固い、重いソールを履かせようとしても、アッパーが負けてしまうということもあるそうです。
やはりカスタムはどうしても靴全体に対して歪が出るわけです。

ただ、先ほども言ったとおり、ワークブーツには余地があるんです。
買い手にも、ブーツ自体にも。

しかし紳士靴は、履き心地、フィット感といった感覚的な部分にこだわり、うるさい層でもあります。
どのメーカーの何番のラストが自分の足には合うとか、靴を作る際に中に入れる木型による履き心地の違いにこだわったり。
ちなみにワークブーツの場合、ラストの話が出るのは、見た目の形についてが多いですね。

カスタムのためのカスタムはカスタムした時点で満足してしまい、別の靴を求めてしまうということもあるでしょう。
下手なカスタムで履き心地を損ねることもあるでしょう。

するとカスタムしたけど履かない靴ができてしまいます。

カスタムして、自分だけの世界に一つだけの靴を作るのもいいですが、その前に少し、10年後、5年後でも、それを履き続けるか考えてみてください。

急ぐ必要はないはずなんです。
だって、修理ではなくカスタムなんですから。
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